
設計をしていると、土地の形がそのまま建築になることがあります。
もちろん最初からそうしようと思っているわけではありません。
建物の配置や駐車場の位置、窓の向きや庭の取り方を考えているうちに、気が付けば土地の形そのものが計画の中心になっている。
扶桑町の家も、そんな住宅のひとつでした。
敷地は緩やかにカーブする道路沿いにあります。
道路には歩道が整備され、街路樹も植えられている。
住宅地でありながら、どこかゆったりとした空気が流れていました。
敷地も道路に合わせるように緩やかな円弧を描いています。
一般的に考えると、決して扱いやすい形とは言えないかもしれません。
けれど計画を始めた頃、私たちが考えていたのは建物の形ではありませんでした。
むしろ、
「この曲線とどう付き合うか」
そこから計画は始まりました。

道路沿いの敷地である以上、視線への配慮は必要です。
隣家との距離も決して大きくはありません。
だからといって壁を立てて閉じてしまうと、この場所が持つ魅力まで失われてしまいます。
歩道のゆとり。
街路樹の緑。
空の広がり。
風の流れ。
本来取り込みたいものまで遮ってしまう。
住宅は守られるべき場所ですが、同時に周囲の環境とつながる場所でもあると思っています。
その両方をどう成立させるかが、この家の大きなテーマでした。
そこで道路に対して並行に壁を配置しながら、敷地の円弧形状に合わせて少しずつ位置をずらしていきました。
すると壁と壁の間に自然な隙間が生まれます。
その隙間から光が入る。
風が抜ける。
視線が遠くまで伸びる。
街路樹の緑も見える。
壁は視線を遮るためのものですが、この家ではそれだけではありません。
必要なものを守りながら、周囲の環境を暮らしの中へ招き入れるための境界でもあります。
閉じるための壁ではなく、つながるための壁。
そんな存在を目指しました。

この考え方は建物だけではありません。
駐車場の計画も同じです。
一般的には何台分のスペースを確保し、そのための矩形を敷地の中につくっていきます。
しかし今回は、敷地が持つ曲線に沿うように縦列で配置しました。
敷地の形を整理するのではなく、敷地の形を受け止める。
その方が限られた敷地を無理なく有効に使うことができると考えました。
また舗装にはアスファルトを採用しています。
歩道や道路と同じ素材を用いることで、敷地と街との境界がやわらかくなります。
住宅の敷地でありながら、街並みの延長のようにも感じられる。
実際の面積以上の広がりやゆとりを生み出しているのは、そうした効果もあるのかもしれません。
この家では、壁の配置も。
駐車場のあり方も。
外構の考え方も。
すべて敷地の形から導かれています。
設計というと、建築家が何か特別な形を考えているように見えることがあります。
けれど実際には、その場所が持つ特徴を丁寧に読み取っている時間の方が長いのかもしれません。
土地の形を消すのではなく、土地の形を受け止める。
扶桑町の家は、そんなことを改めて考えさせてくれた住宅です。
コンテナデザイン きしもとたかのぶ

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