
以前ご紹介した「砂防指定地内の石積み擁壁の上に建つ家」。
計画当初、この土地にはいくつかの大きな条件がありました。
一般的には少し敬遠されるかもしれない土地です。
先日、竣工写真が届いたので改めてご紹介したいと思います。
▼竣工当時の記事はこちら
砂防指定地内の石積み擁壁の上に建つ家
この土地は間口こそ広いものの、奥行きが非常に限られていました。
さらに石積み擁壁によって平坦な部分が少なく、建築に使えるスペースは数字以上に制限されていました。
そこに車2台分の駐車スペースとバイクガレージという要望が加わります。
単純に建物を置こうとすると、住まいのための空間が足りなくなってしまう土地でした。

この計画で考えたのは、条件を消すことではありませんでした。
石積み擁壁も高低差も、この土地が持つ固有の特徴です。
そこで道路レベルにRC造のガレージと駐車スペースを計画し、その躯体を建物全体を支える基礎として、また高低差を受け止める土留めとして利用しました。
RC躯体は単なる駐車場ではなく、地形と建築をつなぐ構造体でもあります。
さらにその上から床を持ち出すことで、斜めに積まれた石積み擁壁の上空部分まで住空間として活用しました。
土地の制約を避けるのではなく、建築の一部として取り込んでいます。


敷地面積は広いものの平地の部分だけを見ると、決して余裕のある土地ではありません。
だからこそ、平面だけではなく断面的な広がりを意識しました。
吹抜けや階段を利用しながら視線が抜ける構成とし、空間同士がゆるやかにつながるよう計画しています。
階段は単なる移動のための装置ではなく、光や視線を運ぶための装置でもあります。
限られた面積の中でも、実際の広さ以上の開放感を感じられる住まいを目指しました。


この土地の魅力のひとつが周囲に残る豊かな緑でした。
そこで中庭を含め、各所に開口部を配置しています。
光や風を取り込みながら、窓の向こうに広がる景色も住まいの一部として考えました。
外へ向かって広がる視線が、敷地の制約を感じさせない空間をつくっています。


以前ご紹介した「土地の形に逆らわないということ|扶桑町の家」では、変形した敷地形状を受け入れながら建築を考えることについて書きました。
今回の家も考え方は同じです。
違うのは、平面的な土地の形ではなく、高低差や石積み擁壁といった断面的な地形がテーマになっていることです。
土地にはそれぞれ固有の形があります。
その形に逆らわず、その場所に合った建築を考える。
家を設計するというより、土地を読み解くことから建築は始まるのかもしれません。
コンテナデザイン きしもとたかのぶ

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