
建築をつくるとき、材料は当たり前のようにそこにある。
木材があり、鉄があり、コンクリートがあり、断熱材がある。
そして住宅設備を見れば、システムキッチンやユニットバス、トイレ、洗面台など、メーカーが工場でつくった製品が入っている。
普段は、それらをひとつひとつ意識することはあまりない。
けれど、建築費の上昇について考えていると、少し見え方が変わってきた。
材料の価格が上がる。
それをつくるためのエネルギーが必要になる。
工場で加工され、運ばれてくる。
その一つひとつを辿っていくと、今の家は思っている以上に、石油やエネルギーと深くつながっている。
家をつくるということは、ずいぶんたくさんのものに支えられている。
そう考えていると、
家は、いったい何に支えられてできているのだろう。
そんなことが気になってきた。
例えば、システムキッチン。
ユニットバス。
トイレや洗面化粧台。
断熱材、防水材、気密・防湿シート、樹脂製の配管、接着剤、塗料。
家の中を見渡してみると、工場でつくられたものがずいぶん多い。
もちろん、それが悪いという話ではない。
むしろ、こうした製品があるからこそ、現在の住宅は高い性能を保ちながら、安定した品質でつくることができる。
断熱性能も、防水性能も、設備の使いやすさも、昔とは比べものにならない。
僕たちが普段つくっている家も、その恩恵をたくさん受けている。
ただ、その一方で、こうした製品の多くには石油由来の樹脂や化学製品、そしてそれらをつくるためのエネルギーが関わっている。
家そのものだけではない。
材料をつくること。
加工すること。
運ぶこと。
それらすべてにエネルギーが必要になる。
今の家は、見えている以上に複雑な仕組みの上にできている。
建築費が上がり、そこに金利の変化も重なって、これから家を建てようとする人にとっては、なかなか厳しい状況が続いている。
建築費を抑えるために、面積を小さくする。
仕上げを見直す。
設備のグレードを下げる。
そういった方法も、もちろん必要になることがある。
でも、材料のことを考えていると、もう一つ別の考え方もあるように思えてきた。
高くなったものを、どう安くするか。
それだけではなく、
そもそも、何を使って家をつくるのか。
ということだ。
そこで、日本の昔の家を思い浮かべてみる。
木がある。
竹がある。
土がある。
石がある。
砂がある。
瓦がある。
地域によって手に入るものは違うけれど、その土地にあるものを使い、人の手で加工し、組み合わせながら家をつくってきた。
もちろん、昔の家がすべて良かったわけではない。
断熱性能も、耐震性能も、設備の快適さも、現代の住宅とは違う。
そのまま昔に戻ればいいという話ではない。
ただ、今の家とはずいぶん違う。
工場で規格化された製品を組み合わせる比重が大きくなった今の住宅に対して、昔の家には、素材そのものから建築をつくっていく感覚があった。
その違いは、少し気になる。
そんなことを考えていたとき、僕が尊敬する建築家のひとり、竹原義二さんが出演されていた動画が目に留まった。
竹原さんは、昔の建築について、木を使って土台をつくり、竹を編み、縄などを使って壁の下地をつくり、そこに土を塗る。
建具も木でつくる。
瓦も、かつては身近な材料と人の手によってつくられていた。
一つひとつは、特別な材料ではない。
木があり、竹があり、土がある。
そこに人の手が加わり、建築になっていく。
そして竹原さんは、昔の建築が「あらゆるものは自然の力を借りてやった」という趣旨の話をされていた。
その言葉が、少し残った。
僕が考えていたことと、どこか重なっていたからだ。
ただ、ここで「昔の家に戻ろう」という話にはならない。
現代の家には、現代の家に必要な性能がある。
断熱も必要だし、防水も必要。
構造の安全性も必要だし、設備の便利さも必要になる。
住宅設備をすべて職人がつくる時代に戻ることもできない。
石油由来の製品をなくすこともできない。
だから、自然素材と工業製品のどちらが良い、という単純な話でもない。
むしろ考えたいのは、
どこに、何を使うのか。
ということなのだと思う。
家のすべてを木や土や石でつくることは難しい。
でも、だからといって、すべてを工業製品でつくる必要もない。
例えば、木を使う。
土を使う。
石を使う。
左官の仕事を残す。
木製建具を使う。
地域に残っている材料や技術に目を向ける。
それらを、現代の性能や技術と組み合わせていく。
全部を変えるのではなく、少しだけ頼り方を変える。
そのくらいのことからでも、これからの建築は考えられるのではないかと思う。

僕自身、これまでの設計で「自然素材の家をつくろう」と考えてきたわけではない。
木を使うこともある。
左官を使うこともある。
石を使うこともある。
庭や植物を建築の一部として考えることもある。
でも、それは自然素材だから使っているわけではない。
その場所に置いたときにどう見えるのか。
光を受けたときにどうなるのか。
時間が経ったときにどう変わっていくのか。
触れたときにどんな感じがするのか。
そういうことを考えていくと、結果として木だったり、土だったり、石だったりする。
素材を選ぶことも、建築を考えることの一部なのだと思う。

竹原さんの動画の中に、
「古き良きものを知っている人たちが、建築の未来をつくる」
という言葉があった。
この言葉が、今の自分には少し分かる気がする。
古いものを知ることは、昔に戻ることではない。
むしろ、これから何を残して、何を変えていくのかを考えるために、過去を見ることなのかもしれない。
木や土や石を使ってきた日本の建築には、長い時間の中で積み重ねられてきた知恵がある。
それをそのまま再現する必要はない。
でも、その考え方の一部を、今の建築に持ってくることはできる。

物価がこれからどうなっていくのか。
エネルギーの価格がどうなるのか。
建築資材がどう変わっていくのか。
それは、僕にも分からない。
だからといって、昔の材料だけで家をつくることもできない。
ただ、今まで当たり前だと思っていたものを、少し立ち止まって考えてみることはできる。
木。
土。
石。
鉄。
コンクリート。
そして、たくさんの工業製品。
家は、それらを組み合わせてできている。
その一つひとつに目を向けてみる。
高くなったから安いものを探すだけではなく、何を使って、どうつくるのかを考えてみる。
それも、これからの家づくりの一つなのだと思う。
家は、何からできているのだろう。
そう考えてみると、いつも見ている家が、少し違って見えてくる。
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