敷地は高知県宿毛市。
緩やかな時間が流れる小高い丘の住宅地に計画された。
施主の要望は明るく開放的な家。デザイン好きな事もあり素材感を大事にしたいとの事であった。
また、不確定ではあるが将来的に奥様が独立し仕事場としても使える家になればとの要望もあった。
この辺りは台風が多いエリアともあり、雨風には細心の注意が必要だ。
明るく開放的な家を望まれている事もあり、開口部を大きくとる事と空間に広がりを作るため中庭を配置する事を考えた。
また、施主の暮らしを抽出した際、身内やお友達がよく集まるとの事と将来仕事場になる事を想定し、1階は誰もが気軽に足を運べるよう外部的な空間となるように考え、2階は自分たちだけのプライベートな場所と考えた。
中庭を挟み1階に2スペース、2階に2スペースと4つのスペースからなる空間構成とし、そのどれもに特定の用途を定めず、ほぼ同じ大きさとする事で将来的な多様性に対して対応できる事を考えた。
しかし、開放的な空間を作る事は雨風に対しては不利に働く。
まず風を上手く逃がすため中庭には屋根を設けず、建物に当たった風が中庭の煙突効果を利用して中庭に引き込まれ上部に抜けると同時に、2階の南面の壁はバルコニーと一体となった斜め壁とし、屋根と化した壁面は南から吹き付ける風を逃がす効果を狙った。
また、そのバルコニーは1階から1間ほど張り出す事で開放的な1階空間に軒がかかる縁側が現れ雨を凌げる場となった。
1階は外部的な空間とした事で床には天然石、壁や天井には木の質感を生かし好みの配色に、2階は家族のプライベートな場所と考え杉板の床で温もりのある空間に。1、2階に素材の違いを引き出し、日々の生活に変化が生まれる。
中庭の吹抜け部には落下防止策としてアスレチックネットを設置。
それは空間の広がりを求めて配置した中庭を、より一層空間同士を繋ぐ役割をもたらしてくれた。
4つの空間+中庭が暮らしを豊かにし、安心して暮らし将来的な様々な可能性を探れる場となる事を願う。
■建築地 :高知県宿毛市
■用途 :住宅
■構造・規模:木造2階建て
■敷地面積 :264.50 m2
■建築面積 : 75.35 m2
■延べ床面積:105.58 m2
■1階床面積 : 52.17 m2
■2階床面積 : 53.41 m2
■外壁 :ガルバリウム鋼鈑・無垢板
■屋根 :ガルバリウム鋼板
■内部床 :玄昌石・杉板
■内部壁 :無垢板・クロス
■内部天井 :ラワン合板・クロス
■浴室 :FRP防水
■キッチン :造作キッチン
■撮影 :冨田英次