敷地は徳島県板野郡北島町。
岡山での暮らしを経て地元へ戻り、実家の敷地内に新たな暮らしの場をつくる計画である。
この住まいは、親世帯と子世帯が同じ敷地に身を置きながらも、互いの生活を尊重し、必要なときに自然と交わる関係性を建築としてどう成立させるかを問い直すことから始まった。
家族みんなが集まり、庭で食事をし、日常の延長として少しだけ非日常を感じられる場。
一方で、在宅ワークや家事動線といった現実的な生活機能が、無理なく、むしろ自然に同化していること。
この相反するような要素を分断するのではなく、建築の構成そのものによって重ね合わせることを意図している。
実家との関係性を踏まえ、両家で共有できるデッキの庭を住まいの中心的な外部空間として据えた。
ただし、庭に対して大きく開くことは、距離が近いからこそ生まれる視線や気配への配慮が同時に求められる。
そこで、リビングと庭のあいだにもう一枚の外皮を設け、縁側や坪庭のような中間領域を挿入した。
室内でも屋外でもないその「余白」は、庭との直接的な関係を和らげ、光や風、視線を一度受け止める干渉帯として機能している。
この考え方は、庭側だけにとどまらない。
道路側、すなわち街に対しても同様に中間領域を設け、キッチンやサニタリーからもアクセスできるサンルーム的なバックヤードとして構成した。
生活の裏側を包み込みながら、建築全体に採光と通風の奥行きを与え、内と外の境界を単純な線ではなく、重なりをもった層として立ち上げている。
実家との配置関係から、リビングの大開口は北を向く。
その条件を単なる制約とせず、南側に設けた吹き抜けや中間領域を介して光を導き、回し、拡散させる構成とした。
直射光に頼らないやわらかな明るさが、時間や季節によって室内の表情を変え、家族が自然と集まる場に穏やかな広がりを与えている。
夫婦の寝室は将来の暮らしを見据え、一階に配置し、平屋的な生活が成立する構成とした。
廊下を極力排し、リビングから各室へと直接つながる動線とすることで、暮らしの中に無駄な距離をつくらない。
その動線上に在宅ワークのスペースを挿入することで、仕事と生活、個と家族の関係を切り離すのではなく、緩やかにつなぎとめている。
家族が集まり、働き、食事をし、庭へ。
この住まいは、特定の行為を規定するための建築ではなく、人と人、内と外、日常と非日常のあいだに生まれる関係性や時間を受け止める「器」として構想したものである。
実家という既存の風景に対し、強く主張することなく、しかし確かな建築的輪郭をもって、新しい暮らしの層を静かに重ねている。
■建築地 :徳島県板野郡
■用途 :住宅
■構造・規模:木造2階建て
■敷地面積 :304.71 m2
■建築面積 : 89.78 m2
■延べ床面積:107.50 m2
■1階床面積 : 86.39 m2
■2階床面積 : 21.11 m2
■外壁 :カラーベスト葺き、焼杉
■屋根 :カラーベスト葺き
■内部床 :コンクリート土間、オーク材
■内部壁 :クロス貼
■内部天井 :クロス貼
■撮影 :冨田英次
