坪数という条件を疑う
以前の記事で、
「与えられた条件から、素直に建築する」ということについて書きました。
敷地形状、法規、周辺環境、予算。
それらを無理にねじ曲げるのではなく、
まずは正面から受け止めること。
けれど以前より、別のある言葉に疑問を抱いていました。
そもそもそれは、
本当に「与えられた条件」なのだろうか、と。
家づくりは、なぜ坪数から始まるのか
家づくりや土地探しの場面で、
一般的に、ほぼ必ず最初に交わされる問いがあります。
「何坪くらい必要ですか?」
この問いは、ごく自然なものとして扱われています。
けれど本来、坪数は敷地条件でも、法規条件でもありません。
それは多くの場合、
これまでの住宅の慣習や、
商品化の過程で共有されてきた目安にすぎません。
つまり、
「与えられた条件」のように見えて、
実は後から設定された基準でもあるのです。

同じ坪数でも、暮らしはまったく別のものになる
住宅を見渡せば、
同じ延床面積であっても、空間の質は大きく異なります。
光の入り方。
天井高さの扱い。
視線の抜け。
外部との距離感。
それらの関係性によって、
25坪でも豊かに感じられる家があり、
35坪あってもどこか窮屈に感じる家が生まれます。
坪数は、空間の質を決定するものではありません。
それはあくまで、
建築を構成するためのひとつの数値条件にすぎないのです。
条件を疑うことも、素直さのひとつ
与えられた条件に素直であることは、大切です。
しかし同時に、
それが本当に“与えられたもの”なのかを問い直すことも、
建築にとっては必要なことではないでしょうか。
坪数。性能。動線。コスト。
それらは暮らしを支える前提であって、
建築そのものではありません。
数値を整えることが目的になった瞬間、
空間は「条件を満たす箱」へと変わっていきます。

数字の前に、空間を考える
建築は、条件をただ満たす作業ではありません。
限られた条件の中で、
どのような空間のあり方が自然なのかを探る行為です。
光の重なり。
居場所の連なり。
内と外の関係。
そうした空間の関係性が整ったとき、
はじめて暮らしは立ち上がります。
坪数はその結果として定まるものであって、
出発点である必要はありません。
決して坪数が少ない方がいい、多い方がいいと言うことではありません。
数字の前に、空間を考える。
その順序を取り戻すこともまた、
「素直に建築する」という姿勢の延長線上にあるのだと思います。

実際の空間に触れるということ
坪数や数値の話だけでは、空間の質は見えてきません。
図面や言葉では伝えきれない部分にこそ、
建築の本質は宿ります。
来週末は、徳島で開催される建築家展に参加します。
そこでは、延床面積や仕様ではなく、
空間そのもののあり方を、実例写真や図面を通して感じていただけます。
「何坪必要か」ではなく、
「どのような暮らしが立ち上がるのか」。
その違いを、実際の設計事例や対話を通して体感できる機会です。
▷ 第153回 建築家展 in 文化の森
2026年2月28日(土)11:00〜17:00
2026年3月1日(日)10:00〜17:00
会場:徳島県立文化の森21世紀館ギャラリー
詳細はこちら → イベントページ
数字の前に、空間を考える。
その感覚を、確かめてみてください。
コンテナデザイン きしもとたかのぶ



