
道路から細く奥まった旗竿地。
一般的には“条件の悪い土地”とされがちなこの形状にも、
静けさとプライバシーという、他にはない魅力が潜んでいます。
今回は、そんな旗竿地に建つ「庭のような家」を通して、
制約ある土地をどのように設計へと昇華させるかを考えてみたいと思います。

計画地は、東と西に接道をもつ約1,800㎡の土地をタテ3×ヨコ3に分割した9区画のうちの中央の敷地。
西側の道路から間口3,500㎜の通路でアクセスする、いわゆる旗竿地です。
旗竿地の特徴は、その名のとおり「竿」と「旗」に分かれた形状。
奥まった“旗”の部分に建物を建て、細い“竿”部分で道路とつながります。
この形状には、一般的に次のようなデメリットが挙げられます。
一方で、旗竿地ならではのメリットもあります。
つまり旗竿地とは、制約が多い分だけ、設計の工夫がそのまま暮らしの質に反映される土地だと言えます。
この敷地は区画の中央に位置し、東西南北の8区画に囲まれています。
建築的に見ると、もっとも“閉じた”条件。
だからこそ、どのように光と風を取り込み、視線をコントロールするかが重要になります。
周囲が閉じる方向に対しては、配置にゆとりを持たせ距離を取り、
軒を最大限に隣地へと伸ばしました。
軒下は“外のようで内のような”曖昧な領域となり、
天井と一体でつながることで、室内の視線が水平に抜け、広がりと開放感を生みます。
外に向かって閉じるのではなく、
敷地の内側に“ひらく”ように建物を構成する。
これが旗竿地の設計におけるひとつの答えです。

囲まれた敷地の中に、あえて家の中の庭を計画しました。
高天井の吹き抜けを設け、上部から陽光を取り入れることで、
閉ざされた環境の中にも明るく、外のような開放感が得られます。
この庭のような居場所は、単なる中庭ではなく、
暮らしの中心に自然を迎え入れる装置。
外に出なくても季節や光の移ろいを感じられる、“内包された外”のような存在です。
旗竿地の奥まった静けさと、この内なる庭の開放が共鳴し、
“閉じた中にある自由”を感じる住まいとなりました。

北側には隣地の庭が面することを想定し、あえて壁を設けました。
開放的な空間の中に、静けさとプライベートな居場所が生まれるよう、
視線の抜けと閉じのバランスを丁寧に整えています。
軒を伸ばし、屋根を地面に引き寄せるように構成することで、
敷地全体に“ひとつ屋根の下”のような安心感が生まれました。
それはまるで、屋根で覆われた庭の中で暮らしているような感覚です。
旗竿地という土地は、一見すると不利に見えます。
けれどその制約は、暮らしの密度を高め、光や風、距離感への感受性を磨かせてくれます。
外のような中、内のような外。
そのあいだに生まれる豊かさこそが、
この土地にしかできない暮らしのかたちです。
制約を嘆くのではなく、それを設計のテーマとして受け止める。
そこから、旗竿地という“閉じた土地”が、
静けさと開放感を併せもつ庭のような家へと変わっていきました。
コンテデザイン きしもとたかのぶ
神戸の設計事務所コンテナデザインは、シンプル且つ機能性や住みやすさを兼ね備えた
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