素直に建築すること
― 与えられた条件からはじめる設計 ―
建築は「足すこと」から始まらない
建築を考えるとき、私たちはつい何かを足そうとします。
広さや機能、わかりやすいコンセプト。
けれど設計は、本来「与えられているもの」を受け取ることから始まります。
敷地の形、周囲の環境、光の入り方、風の抜け方。
まずはそれらを読み取ること。
そこに、建築の出発点があります。

条件は制約ではなく、輪郭である
敷地の形状や法規、周辺環境は、しばしば「制約」と呼ばれます。
しかし設計の視点から見れば、それらは建築の方向性を示す輪郭でもあります。
無理に整えようとするのではなく、
過度に操作して“メリット”へ転換しようとするのでもない。
その輪郭を丁寧に読み取り、建築に取り込んでいく。
それが、私たちの基本姿勢です。

形の良し悪しではない
整形地であっても、変形地であっても、
完全に自由な敷地というものは存在しません。
大切なのは、土地を評価することではなく、
その状況をどう読み解くかという視点です。
これまで紹介してきた
制約のある土地(変形地編)
も、特別な解法を示したものではありません。
与えられた条件に正直であろうとした結果、
あのかたちになっただけです。

無理をしないという強さ
敷地をねじ伏せるのではなく、
条件を過度に誇張するのでもない。
与えられた状況に対して、素直に建築する。
それは消極的な姿勢ではなく、
もっとも誠実な意思決定だと考えています。
土地探しの前に考えておきたいこと
土地を探す段階で「整った形」や「広さ」だけを基準にすると、
本来の豊かさを見落としてしまうことがあります。
敷地は、建築と切り離して考えるものではありません。
だからこそ私たちは、
建築家と土地を探すという選択
という方法を提案しています。
土地を評価する前に、
そこにどのような建築が可能かを考える。
その順序が、家づくりの質を大きく左右します。

面積や数字に対しても同じ姿勢で
この考え方は、敷地に限った話ではありません。
面積や予算、暮らし方といった条件に対しても同じです。
与えられた条件の中で、
何を優先し、何を削ぎ落とすのか。
そこに、設計者の思考が現れます。
数字を追うのではなく、
暮らしの質を組み立てる。
その視点については、あらためて別の記事で触れていきます。
足さず、引きすぎず
建築にできることは、
何かを誇張することではありません。
そこにあるものを丁寧にすくい上げ、
足さず、引きすぎず、
必然性のあるかたちへと整えていくこと。
素直に建築すること。
それが、私たちの設計の原点です。
コンテナデザイン きしもとたかのぶ



